漢詩と中国文化
HOMEブログ本館東京を描く水彩画陶淵明英文学仏文学西洋哲学 | 万葉集プロフィールBSS

秦有:男女の戯れあい(詩経国風:鄭風)



  秦與有    秦と有と
  方渙渙兮  方(まさ)に渙渙たり
  士與女    士と女と
  方秉草兮  方に草を秉(と)る
  女曰觀乎  女曰く觀しやと
  士曰既且  士曰く既に且(い)きしと

  且往觀乎  且つ往きて觀んか
  有之外    有の外に
  洵大且樂  洵(まこと)に?(おほ)いにして且つ樂し
  維士與女  維(こ)れ士と女と
  伊其相謔  伊(こ)れ其れ相ひ謔むれ
  贈之以勺藥 之に贈るに勺藥を以てす

  秦與有    秦と有と
  瀏其清矣  瀏として其れ清し
  士與女    士と女と
  殷其盈矣  殷として其れ盈(み)つ
  女曰觀乎  女曰く觀しやと
  士曰既且  士曰く既に且きしと

  且往觀乎  且つ往きて觀んか
  有之外    有の外に
  洵大且樂  洵に大いにして且つ樂し
  維士與女  維れ士と女と
  伊其將謔  伊れ其れ將に謔れ
  贈之以勺藥 之に贈るに勺藥を以てす

?水と?水は、春を迎えて水かさを増し盛んに流れています、男と女が集まってきて、水草を取っています、女がいいます「あのすばらしい景色を見ましたか」、男が答えて言います、「ああ、行ってきたとも」

女は重ねていいます、「一緒に水のほとりに行ってみましょう、そこは広々としてすばらしいですよ」、男と女は、このように戯れあい、互いに芍薬の花を贈りあうのです

秦水と有水は、春を迎えて水深増し清らかに流れています、男と女が集まってきて、水辺にいっぱいになります、女がいいます「あのすばらしい景色を見ましたか」、男が答えて言います、「ああ、行ってきたとも」

女は重ねていいます、「一緒に有水のほとりに行ってみましょう、そこは広々としてすばらしいですよ」、男と女は、このように戯れあい、互いに芍薬の花を贈りあうのです


春の川辺で行なわれる歌垣の様子を詠んだものだとされる。日本の歌垣は筑波山をはじめ山の上で行なわれるのが多かったが、中国ではこの歌にあるように、河で行なわれるものが多かったようである。






前へHOME詩経国風次へ




 


作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007-2008
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである