漢詩と中国文化
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寒食雨(二):蘇軾を読む



蘇軾の五言古詩「寒食の雨(其二)」(壺齋散人注)

  春江欲入戸  春江 戸に入らんと欲し
  雨勢來不已  雨勢 來って已まず
  小屋如漁舟  小屋 漁舟の如く
  濛濛水雲裏  濛濛たり水雲の裏
  空庖煮寒菜  空庖に寒菜を煮
  破竈燒濕葦  破竈に濕葦を燒く
  那知是寒食  那ぞ知らん是れ寒食なるを
  但見烏銜紙  但だ見る烏の紙を銜むを
  君門深九重  君門深きこと九重
  墳墓在萬里  墳墓萬里に在り
  也擬哭途窮  也た途の窮するに哭せんと擬す
  死灰吹不起  死灰 吹けども起こらず

水嵩をました春の長江が戸口の中まで浸水しそうだ、雨が降り続いてやまないからだ、この小さな家は漁舟のようなもの、濛々と立ち込めた霧の中にたたずんでいる

何もない台所で粗末な野菜を煮る、竈には湿った葦をくべる、これでは今日が寒食だと誰にわかるだろう、烏が紙を銜えている事で密かにわかる程度だ

宮中に至ろうにも君門は九重の奥にあり、故郷に帰ろうにも万里を隔てた彼方にある、あの阮籍が道が極まったといって泣いたように私も泣こうか、竈はいくら吹いても火がおこらないから






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