漢詩と中国文化
HOMEブログ本館東京を描く水彩画陶淵明英文学仏文学西洋哲学 | 万葉集プロフィールBSS

素飯:陸游を読む


陸游の七言律詩「素飯」(壺齋散人注)

  放翁年來不肉食  放翁 年來 肉食せざるも
  盤箸未免猶豪奢  盤箸 未だ猶ほ豪奢たるを免れず
  松桂軟炊玉粒飯  松桂 軟かく炊ぐ 玉粒の飯
  醯醬自調銀色茄  醯醬 自ら調ふ 銀色の茄
  時招林下二三子  時に招く 林下の二三子
  氣壓城中千百家  氣は壓す 城中の千百家
  緩步橫摩五經笥  緩步して橫ざまに摩す 五經の笥
  風爐更試茶山茶  風爐 更に試む 茶山の茶

わしは近年肉食をしておらぬが、食卓は依然として豪華だわい、松桂で玉のような飯を炊き、醯醬で自分で料理するのは銀色の茄子(放翁:陸游の号、盤箸:大皿と箸、食卓のこと、醯醬:酢と醤油、銀色茄:白茄子)

時に二三の隠者を招き、その迫力は城内の多くの人をしのぐ、緩やかに歩みながら腹をさすったり、コンロに湯を沸かして茶山の茶を入れる(林下:隠棲した人々のいるところ、五經笥:五經のつまった箱、学問した人物の腹のこと、風爐:湯を沸かすコンロ)


開禧二年(1206、82歳)、老いて肉食こそしなくなったが、食卓は依然豪華だと云い、そこに気の知れた人々を招いてはともに清談す、その得難い楽しみを大らかに歌ったところは、いかにも陸游らしい






HOME陸游次へ




 


作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2009-2013
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである