漢詩と中国文化
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春愁:陸游を読む


陸游の七言律詩「春愁」(壺齋散人注)

  春愁茫茫塞天地  春愁 茫茫として 天地を塞ぎ
  我行未到愁先至  我が行 未だ到らざるに 愁ひ先づ至る
  滿眼如雲忽復生  滿眼 雲の如く 忽ち復た生じ
  尋人似瘧何由避  人を尋ぬること 瘧に似たり 何に由ってか避けん
  客來勧我飛觥籌  客來りて 我に勧む 觥籌を飛ばせと
  我笑謂客君罷休  我笑って 客に謂ふ 君罷めよ休めよ
  醉自醉倒愁自愁  醉へば自づから醉倒するも 愁ひは自づから愁ふ
  愁與酒如風馬牛  愁ひと酒とは 風馬牛の如しと


春の愁いが茫々とたちこめて天地を塞ぐ、我が旅はまだ春を迎えぬ先から愁いに襲われる、その愁いは一面に雲の如く巻き起こり、瘧(おこり)のように人を襲うのを避けることができぬ

客が来て酒でも飲めよと薦めるが、自分は答えて無駄な忠言はやめなさいという、酔えばたしかにつぶれてしまうが愁いはひとりでにやってくる、愁いと酒とは本来無関係なものなのだからと(觥籌:觥は水牛の角で作った盃、籌は盃をのみほした回数を数える竹の棒、それを飛ばせとは盃を重ねよという意)


淳熙3年(1176)成都にあっての作。ここでいう憂とは、祖国が侵略を許している事への憂慮であろう。






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