漢詩と中国文化
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宿白沙驛(初過湖南五裏):杜甫



杜甫の五言律詩「白沙驛に宿す(初めて湖南の五裏を過る)」(壺齋散人注)

  水宿仍餘照  水宿仍ほ餘照あり
  人煙複此亭  人煙複た此の亭
  驛邊沙舊白  驛邊沙舊(もと)白し
  湖外草新青  湖外草新たに青し
  萬象皆春氣  萬象皆春氣あり
  孤槎自客星  孤槎自づから客星
  隨波無限月  波に隨ふ無限の月
  的的近南溟  的的として南溟に近づく

湖上に宿ればなお残照が消えやらず、この駅亭には人煙が立ち上っている、あたりの湖畔の砂は白く、湖外の草は青々としている

あらゆるものが春の気配に満ちているのに、ひとり自分は客星のようにわびしいさまだ、波に浮かんだ無限の月が、輝きながらちょうど南天に差し掛かったところだ


白沙は洞庭湖の南、湘水のほとりにある宿駅。洞庭湖にたどりついた杜甫はなぜか、北上して故郷の洛陽に向かうことをせず、南下して長沙に向かう。白沙にはその途上立ち寄ったのだろう。一面春の気配に満ちた中に、ひとり老弱をかこつ杜甫、そのコントラストが杜甫の孤独をあぶりだしている






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