漢詩と中国文化
HOMEブログ本館東京を描く水彩画陶淵明英文学仏文学西洋哲学 | 万葉集プロフィールBSS

秋興其五(一臥滄江驚歳晩)杜甫を読む



杜甫の七言律詩「秋興其五」(壺齋散人注)

  蓬莱宮闕對南山  蓬莱の宮闕南山に對す
  承露金莖霄漢間  承露の金莖霄漢の間
  西望瑤池降王母  西のかた瑤池を望めば王母降る
  東來紫氣滿函關  東來の紫氣函關に滿つ
  雲移雉尾開宮扇  雲移りて雉尾宮扇を開く
  日繞龍鱗識聖顏  日は龍鱗を繞りて聖顏を識る
  一臥滄江驚歳晩  一たび滄江に臥して歳の晩るるに驚く
  幾回青瑣照朝班  幾回か青瑣朝班を照らせし

蓬?の宮闕は終南山に対し、承露の金莖は天の川にまで聳えている、西の方瑤池を望めば、そこには西王母が降り立ち、東から吹いてくる芳しい風が函谷関を覆っている

雲が流れて雉尾の宮扇が左右に開き、太陽は龍鱗の周りをめぐって皇帝の顔を照らし出す、ここ滄江に臥している間に年が暮れてしまった、かつて朝廷で点呼を受けたことが何回あったろうか


長安の宮殿に仕えていたころを回顧したもの。滄江はキ州の辺りを流れる長江をさす。杜甫は今都から離れた辺鄙な場所で年月を過ごしながら、昔の栄光をなつかしんでいるのである。






前へHOME杜甫次へ




 


作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2009-2011
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである