漢詩と中国文化 |
HOME|ブログ本館|東京を描く|水彩画|陶淵明|英文学|仏文学|西洋哲学 | 万葉集|プロフィール|BSS |
夢李白二首其二 杜甫 |
杜甫の五言古詩「李白を夢む二首 其二」(壺齋散人注) 浮雲終日行 浮雲終日行き 遊子久不至 遊子久しく至らず 三夜頻夢君 三夜頻りに君を夢む 情親見君意 情親しみ君が意を見る 告歸常局促 歸るを告げて常に局促たり 苦道來不易 苦(ねんごろ)に道ふ來るは易からず 江湖多風波 江湖風波多く 舟楫恐失墜 舟楫失墜せんことを恐ると 浮雲は終日流れてくるのに、あなたとはなかなか会えない、三夜にかけてあなたの夢を見ました、そのなかであなたの暖かい志に接することが出来ました でもあなたは急いで帰らねばならぬという、またここへやってくるのは大変だったともいった、途中江湖には風波が立って、船が沈没しそうになったと 出門?白首 門を出でて白首を?く 若負平生志 平生の志に負(そむ)くが若し 冠蓋滿京華 冠蓋京華に滿ち 斯人獨憔悴 斯の人獨り憔悴す 孰云網恢恢 孰か云ふ網恢恢たりと 將老身反累 將に老いんとして身は反って累せらる 千秋萬歳名 千秋萬歳の名 寂寞身後事 寂寞たり身後の事 あなたは門を出て白髪頭を掻いた、そのさまはあなたの平生の志とは違ったように見える、街には栄華を極めるものもいるというのに、あなたは一人憔悴してみえる 人生とはなかなかうまく行かないものです、あなたも老年に際して罪をこうむった、千秋萬歳の名声も、死んだ後でしか得られないのでは、悲しいことですね 「李白を夢む」連作のその二、夢の中で李白が訪ねてくるのが三日も続いたのはどうしたわけか、あなたは波高い江湖を沈没しかけながら、困難をついて自分を訪ねてくれた、そんなあなたの憔悴しきった姿に接して、うれしい気持ちとともに、不安な気持ちが沸き起こる、もしやあなたの身に不吉な事柄が起こったのではないか、そんな気持ちを杜甫は歌う。 「將に老いんとして身は反って累せらる」と書いていることから、杜甫は李白が反逆の罪をこうむって、夜郎に流されたのを知ったのであろう。 |
前へ|HOME|杜甫|次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2009-2011 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |