漢詩と中国文化 |
HOME|ブログ本館|東京を描く|水彩画|陶淵明|英文学|仏文学|西洋哲学 | 万葉集|プロフィール|BSS |
月夜憶舍弟:杜甫を読む |
杜甫の五言律詩「月夜に舍弟を憶ふ」(壺齋散人注) 戍鼓斷人行 戍鼓人行斷え 秋邊一雁聲 秋邊一雁の聲あり 露從今夜白 露は今夜より白く 月是故郷明 月は是れ故郷の明かり 有弟皆分散 弟有れど皆分散し 無家問死生 家の死生を問ふ無し 寄書長不達 書を寄せど長く達せず 況乃未休兵 況んや乃ち未だ兵を休めざるをや 戦争の響きで人の往来も絶え、秋の野辺には雁の鳴き声が聞こえるばかり、夜露がますます白くなり、月の明るさは故郷のそれと同じだ 弟があっても皆分散し、家がなくたったため消息を得る手がかりも無い、手紙を書いても何時までたっても返事がない、戦乱が収まらないではやむを得ぬことだ 戍鼓とは城郭を守る兵士が時を告げるために鳴らす太鼓のこと、杜甫はこの音を秦州の城内で毎日聞いていたのかもしれない、第三節にあるとおり時節は白露つまり秋の初めだ、 この詩の中で杜甫は、弟たちが散り散りばらばらになって、消息も得られないことを嘆いている、世の中はいまだ戦乱にあけくれ、ひとびとは家を失って逃げ惑うしかなかった 杜甫はこの秦州にも長く腰を落ち着けることができなかった、わずか二ヶ月でこの地に見切りをつけ、蜀へ向かって更に避難の旅を続けることになる。 |
前へ|HOME|杜甫|次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2009-2011 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |