漢詩と中国文化 |
HOME|ブログ本館|東京を描く|水彩画|陶淵明|英文学|仏文学|西洋哲学 | 万葉集|プロフィール|BSS |
遺懐 杜甫 |
杜甫の五言古詩「懐ひを遺る」(壺齋散人注) 憶與高李輩 憶ふ 高李の輩と 論交入酒櫨 交を論(むす)んで酒櫨に入りしことを 兩公壯藻思 兩公 藻思壯(さかん)にして 得我色敷腴 我を得て色は腴(よろこび)を敷(ひろ)げぬ 氣酣登吹臺 氣酣(たけなは)にして吹臺に登り 懷古視平蕪 古を懷ひて平蕪を視れば 芒錫雲一去 芒錫のかたに雲一たび去り 雁鶩空相呼 雁鶩 空しく相ひ呼ぶ 思い起こす 高適、李白の両先生と、仲良く酒場に入ったときのことを、ふたりとも藻思(文学)への思いが盛んで、自ら納得しては喜び合ったものだ 気分が高揚すると吹臺に登って、昔のことを回顧しながら平野を眺めわたせば、芒錫の方角に向かって雲がたなびき去り、雁と鶩(かも)とがむなしく呼び合うさまが見える 李白、高適とともに過ごした梁宋の旅は、杜甫にとって生涯の思い出になったようだ。奔放自在な李白と豪放磊落な高適、このはるかに年長の二人に、杜甫は自分にないものを感じ、大いなる憧れをも抱いた 晩年になった杜甫は、この二人と過ごした時間を思い出し、それを「遺懐」と題する長編古詩のなかで歌い上げた。 詩は開封での、二人との交わりを歌っている。開封は戦国時代の梁の都となって以来、交通の要所として栄えていた。その開封の郊外に吹臺と呼ばれる奏楽台がある。梁の孝王が建てたものだが、それ以前から、中国の伝説上の帝王禹にゆかりのある土地でもあった。 |
前へ|HOME|杜甫|次へ |
作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2009 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |