漢詩と中国文化
HOMEブログ本館東京を描く水彩画陶淵明英文学仏文学西洋哲学 | 万葉集プロフィールBSS


野田黄雀行:李白


李白の雑言古詩「野田黄雀行」(壺齋散人注)

  遊莫逐炎洲翠    遊びては炎洲の翠を逐ふ莫かれ
  棲莫近呉宮燕    棲みては呉宮の燕に近づく莫かれ
  呉宮火起焚巣果   呉宮火起って巣果を焚かん
  炎洲逐翠遭網羅   炎洲の翠を逐へば網羅に遭はん
  蕭條兩翅蓬蒿下   蕭條たる兩翅 蓬蒿の下にあれば
  縱有鷹?奈汝何   縱ひ鷹?有るとも 汝を奈何せん

遊んでは炎洲(海南島)のカワセミを追ってはならない、くつろいでは呉宮の燕に近づいてはならない、呉宮からは火が起こってツバメの巣を焼くかも知れぬ、カワセミの後を追っては一緒に網にかかるかも知れぬ、ただひとり翼を蓬蒿の下に休めておれば、たとえ鷹や鳶がきても捕まることはない


李白は寓意詩を作ることはあまりなかったが、これはその数少ない一つ、スズメに寄せて、身分の高い人と付き合うことの危険を警告したものだ

呉宮の燕は「越絶書」に見える故事。夜警が松明をもってツバメの巣を覗き込んだところ、誤って火が建物を焼き、町全体が炎に包まれたという話である。






前へHOME李白次へ






 


作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007-2010
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである