漢詩と中国文化
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覇陵行送別:李白


李白の雑言古詩「覇陵行送別」(壺齋散人注)

送君覇陵亭       君を送る覇陵亭
覇水流浩浩       覇水流るること浩浩たり
上有無花之古樹    上には無花之古樹有り
下有傷心之春草    下には傷心之春草有り
我向秦人問路岐    我秦人に向って路岐を問へば
云是王粲南登之古道 云ふ是れ王粲南登之古道なりと
古道連綿走西京    古道連綿として西京に走り
紫闕落日浮雲生    紫闕 落日 浮雲生ず
正當今夕斷腸處    正に當たる 今夕斷腸の處
麗歌愁絶不忍聽    麗歌愁絶して聽くに忍びず

君を送って覇陵亭までくると、覇水の流れははるかに続いている、頭上には花のない古木が枝をたれ、足元には心を痛ましめる春草が生えている

土地の人に向かって分かれ道を問えば、これはかの王粲が「南登」と歌った古道だという、古道はどこまでも続いて長安に至る、その長安の宮殿には夕日が落ちて浮雲が生じているのだろう

今宵斷腸の思いをしながらここに立つと、別れの歌は悲しくて聞くに忍びない


中国の詩人は友との別れを良く歌った、李白も例外ではない、この詩は誰との別れを歌ったものか定かでないが、東の方へと下っていく友との別れだったのだろう

長安は北の方角に胃水が流れ、東の方角に覇水が流れている。胃水ははるか西から流れてきてやがては黄河に合流する、覇水は終南山を水源として北流し胃水に合流する。どちらも別れの舞台となっていたが、胃水は西に向かう人、覇水は東に向かう人との別れの場となっていた。






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