漢詩と中国文化
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秋興其三:杜甫を読む



杜甫の七言律詩「秋興其三」(壺齋散人注)

  千家山郭靜朝暉  千家山郭朝暉靜かに
  一日江樓坐翠微  一日江樓翠微に坐す
  信宿漁人還泛泛  信宿の漁人還た泛泛たり
  清秋燕子故飛飛  清秋の燕子故(ことさら)に飛飛たり
  匡衡抗疏功名薄  匡衡疏を抗(あ)げて功名薄く
  劉向傳經心事違  劉向經を傳へんとして心事違ふ
  同學少年多不賤  同學の少年多く賤しからず
  五陵衣馬自輕肥  五陵の衣馬自づから輕肥

千戸ばかりの山地の城郭に朝日が静かにさし、自分は一日中江樓におって翠微に坐している、川面には猟師が船を二晩にわたってもやい、ツバメは秋になっても猶飛び回っている

かの匡衡は疏を奉ってもあいてにされず、劉向は経を伝えようとして果たせなかった(自分もまた同じことだ)、同学の少年だったものの多くは出世して、都を闊歩しているだろうに(この自分は落ちぶれたままだ)


キ州の朝景を述べながら、そこに自分の思いを織り交ぜて歌ったもの、

翠微に坐すとは山中に暮らすの意、匡衡抗疏功名薄とは、匡衡がしばしば上疏して意見を奉ってもなんら報われることのなかった意、自分の境遇に重ね合わせているのだろう






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