漢詩と中国文化
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時世妝:白楽天を読む


白楽天の「新楽府」から「其三十五 時世妝」(壺齋散人注)

  時世妝 時世妝  時世の妝 時世の妝
  出自城中傳四方  城中より出でて四方に傳はる
  時世流行無遠近  時世の流行 遠近無し
  腮不施朱面無粉  腮に朱を施さず面に粉無し
  烏膏注唇唇似泥  烏膏唇に注(つ)けて唇泥に似たり
  雙眉畫作八字低  雙眉畫きて八字の低を作す
  妍媸黑白失本態  妍媸 黑白 本態を失し
  妝成盡似含悲啼  妝成って盡く悲啼を含めるに似たり
  圓鬟無鬢堆髻樣  圓鬟(かん)鬢無く堆髻の樣
  斜紅不暈赭面狀  斜紅暈せず赭面の狀
  昔聞被髪伊川中  昔聞く 被髪伊川の中
  辛有見之知有戎  辛有之を見て戎有るを知る
  元和妝梳君記取  元和の妝梳 君記取せよ
  髻堆面赭非華風  髻堆面赭は華風に非ず

流行の化粧は、都会から出て四方に伝わる、時勢の流行には近在も遠方もない、頬紅をささず顔に白粉を塗らぬ、黒い油を口に塗って泥を見るようだ、眉を書けば八の字に垂れ下がって見苦しい(時世妝:流行の化粧法、腮:顎から頬にかけて)

美醜と黒白がひっくり返って、化粧した顔は泣きべそ顔だ、丸髷にはふくらみがなくさいづちまげのようだし、頬紅はぼかしてないのでまるで赤ら顔だ(妍媸:美醜、含悲啼:泣きべそ顔、圓鬟:丸髷、堆髻:さいづちまげ、胡人の女が結ぶ、斜紅:斜めに引いた頬紅、赭面:赤ら顔)

昔のことに、髪をふり乱した者たちが伊川で踊っているのを見て、辛有はその地が戎の地だといったというではないか、元和の流行の化粧について記録しておいてほしい、さいづちまげや赤ら顔は華風ではないと(被髪:髪を振り乱す、妝梳:化粧とヘアスタイルのこと)


同時代に流行したファッションを批判したもの。都の人々が中国固有の化粧やヘアスタイルを捨てて、戎の風俗に現を抜かしているのは問題だという内容。






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